システムアーキテクト資格取得のやり方|わかりやく解説|2022年4月試験合格

高度IT・基礎知識

この記事の目的

  • 「仕事が忙しいと感じる30代・40代会社員」のかた向けに
  • 「仕事・家事育児と両立してシステムアーキテクト資格を取得するやり方」を
  • 「同じように実践し、資格を取得できた」経験から説明します。

メリットとコスト

資格取得によるメリットは大きい

はじめに、システムアーキテクト資格について簡単に説明します。

この資格は国家高度IT資格のうち、「業務とITのグランドデザイナーの専門家」であることの証明です。

イメージとしては以下のようになります。

  • 経営者は経営戦略を考える(例:この新商品で売り上げ10%アップを目指したい)
  • ITストラテジストはIT戦略を考える(例:それならWeb通販がおすすめです)
  • システムアーキテクトは基本設計を考える(例:Web通販画面のイメージと機能はこうです)
  • プロジェクトマネージャは開発を統制する(例:Web通販機能の開発を指揮します)
  • プロジェクトマネージャ指揮のもと、エンジニアが開発を実施

資格取得によるメリットは以下が挙げられます。

  • 国家高度IT資格なので、社内外の関係者から高い信頼が得られる
  • 基本設計のまとまった知識が習得できるので、仕事に活かしやすい
  • 自分に自信が持てるようになり、何事も前向きに取り組める
  • 他の高度IT資格と構成が近いので、次の資格取得への足掛かりになる

簡単に言うと「ハク(権威性)がつき、自信がつき、仕事と研鑽が楽しく」なります。

このメリットは相当に大きく、自分らしい生き方の手助けになります。

「会社で長年仕事をしているけど、いまいち自分に自信がない…」

「システム関連部門にいたけど、現行システムの修正ばかりで力がついた気がしない…」

「将来は独立や副業も考えたいけど、何から手を付けてよいかわからない…」

このような考えをお持ちの方には、特におすすめです。

資格取得のコストはそこまで大きくない

さて、「何が嬉しいか」はわかったとして、「どのくらい大変なのか」が気になるところです。

資格取得にかかるコストは大きく「コスト」と「時間」です。

まず「かかるコスト」ですが、決して高くはありません。

場合によっては収支がプラスになります。

というのも、独学であれば必要なコストは以下のとおり約1万円です。

  • 5,700円の受験料
  • 5,000円のテキスト(TACのALL IN ONEなら午前1が2,000円、午前2~午後2が約3,000円)

そして、会社によっては資格取得の支援や、報奨金制度を導入しています。

  • (例1)約5万円のスクール費用を会社が負担、さらに合格時は1万円の報奨金
  • (例2)合格時に5~10万の報奨金(とくにIT関連企業の場合は高額な傾向)

なお、「スクールも利用したいが、会社の支援が一切ない」場合はトータルコストは5~7万円となります。

しかし、今回が不合格でも次に挑戦する場合は5,700円の受験料くらいでよいわけですから、中長期的にみても決して高くはないと考えます。

次に「かかる時間」ですが、これもそこまで膨大ではありません。

なぜでしょうか。

それは、簡単に言えばこの資格試験の特徴が以下であるためです。

  • 本格的な経営知識は不要。経営戦略・組織戦略を作ったことがなくてもOK
  • 高度なシステム知識は不要。プログラムコードが1行も書けなくてもOK
  • なぜなら、求められる役割が「業務とITのグランドデザイナー」だから
  • むしろ必要なのはユーザのニーズを「聞く力」とそれを「表現する(大まかにデザインする)力」
  • なお、この試験はペーパーなので「読む力と表現する力」となる

つまり、会社の中で「毎日推し量り(※1)や社内調整(※2)ばかりだ…」と疲弊されている方は、すでにこの資格で最も必要かつ取得に時間がかかる「読む力と表現する力」があるのです。

そうなると、細かくは別の記事で書きますが、本番の半年~4カ月くらい前から「1日15~30分、週1(土日いずれか)で1~2時間」で合格は可能となるのです。

※1:忖度(そんたく)とも言う。本来は「他人の心情を察する」こと。会社では「上司に、必要な情報を、適切なタイミングで伝えること」

※2:例えば部門①の部長が「このような全社情報がある」と役員Aさんに伝えたとする。次に別の部門②の部長がAさんと会うとき、この情報を知らないと「なぜ部門①と連携を取り合っていないのか」となる。そこで部下はAさんと部長①・部長②の会議スケジュールを注視し、そのような情報齟齬がないように情報共有する

よって、チャレンジをおすすめする資格

以上のように、システムアーキテクトは「仕事が忙しいと感じる30代・40代会社員」の方には特におすすめできる資格です。

メリットが大きいわりに、コストはそこまでかからないからです。

それでは「じゃあ試しにやってみよう。最初に何をするのか?全体の流れは?」が気になるところと思います。

最初にやることと全体の流れ

最初にどれくらい時間が使えそうか考える

最初に、資格取得の学習にどれくらい時間が使えそうか考えてみましょう。

いずれにせよ後から変わるので、最初は大まかでよいと思います。

学習を始める前に日々の予定は一杯になっていると思うので、学習時間のねん出が必要です。

例えば以下が挙げられます。

  • 朝15分~30分くらいのスマホを見る時間を使う
  • 休日の土日いずれか1~2時間、子どもが昼寝している時間を使う

ここで大事なのは、あくまで日々の生活や仕事・家事育児をおろそかにしないことです。

例えば睡眠時間を削って体調を崩したり、家事育児がおろそかになって家の中が険悪になっては学習どころではありません。

自分にとっての優先度を考え、「ここは削ってもよいかもしれない」時間を充ててみましょう。

なお、初めてシステムアーキテクトを学習する場合、「毎日15~30分、週末に1~2時間」はかなり短時間なので効率的な取り組みが必要です。

全体の流れを把握する

次に、学習の全体の流れを大まかに把握します。

最初の15~30分でざっと確認してみましょう。

まず試験の構成は以下のとおりです。

  • 午前1、午前2、午後1、午後2の4部構成
  • 4部すべて合格することで資格取得
  • 午前1は四択が30問。6割で合格
  • 午前2は四択が25問。6割で合格
  • 午後1は国語問題が2題。6割で合格
  • 午後2は論文試験。評価Aで合格

次に学習の方針は以下のとおりです。

  • 午前1は過去問の暗記勝負。約300問くらいがおおよその目安
  • 午前2も過去問の暗記勝負。約100問くらいがおおよその目安
  • 午後1は国語問題なので解き方を覚える。約10題くらいがおおよその目安
  • 午後2の論文試験はコツの理解・ネタの準備・書く練習

日々のタスクに落とし込む

最後に、日々のタスクに落とし込んでみましょう。

おすすめとしては以下となります。

  • 午前1・午前2は朝15~30分の隙間時間で少しづつやる
  • 午後1・午後2は週末のまとまった時間でやる

かなり大まかな計算ですが、効率的にやれば以下イメージとなります。

まず午前1・午前2は

  • 合計400問を1問1分でやる
  • 試験までできるだけ均等にあと2ラリーやる。1回目より早いが多めに見て800分
  • 合計で1200分。1日15分づつかけると約80日(3カ月)

次に午後1は

  • 1題解くのに1時間、答え合わせに30分
  • 解きながらやり方も覚える
  • 10題やるのに15時間
  • 2ラリー目は問題と答えを振り返るくらいなので1題15分程度。10題で2.5時間
  • 合計で17.5分。週末に1時間づつ行うと約17.5週(4カ月)

最後に午後2は

  • コツの理解1時間、ネタの準備1時間、実際に手で書く練習2時間、振り返り1時間
  • これを2~3回繰り返す
  • 合計で15時間。週末に1時間づつ行うと約15週(4カ月)

これでも相当短い見積もりなので、やはり週末はできれば土曜1時間・日曜1時間の合計2時間は確保したいところです。

おすすめのテキスト

ここまでご覧になって「やってみるか」と思われた場合、まずはテキストの購入をおすすめします。

私の場合はTACのALL IN ONE(午前1は免除なので、午前2~午後2の1冊のみ)で実際に学習し、効果が高いと感じました。

具体的に良かった点を説明します。

まず午前1・午前2は

  • 過去問を効率よく学習できる
  • 問題選定の手間が省ける(直近1年は出づらいので見ないなど)
  • 過去問を印刷したり公式の回答を確認する手間が省ける
  • 簡単な解説がついているので要点をつかみやすい(公式の回答は解説がない)

次に午後1・午後2は

  • 解き方や考え方のコツが書いてあるので、最も肝となる部分を効率的に学べる
  • 要となる過去問を選別しているので、良くない問題をベースに学習するリスクを減らせる

何より大きいのは

  • 購入すれば今日からでも早速始められる
  • 手元にコンパクトにまとまるので持ち運びが楽

もちろん過去問の印刷や、アプリの活用などやり方は色々あると思います。

ただ、印刷やアプリ導入の手間を省くため、私は書籍にしました。

よろしければご検討ください。

さて、では学習の具体的なやり方について説明します。

学習法(午前1・午前2)

午前1・午前2は過去問の暗記勝負

午前1・午前2はともに過去問からの出題が約5割です。

残り5割の問題も、過去問を抑えつつ、あきらめずに考えれば2択には絞れるので、合格の6割に届きます。

つまり、合格するには「過去問を確実に取る」「新規もあきらめず考える」の2つがポイントです。

それでは、具体的にどの過去問を学習すればよいのでしょうか。

TACのALL IN ONEなどテキストを購入された方は、「確認問題」として過去問の抜粋がされているのでそれを前から順に解けばOKです。

過去問を印刷して使われる方は、直近2~3年は外して過去にさかのぼり見ていきます。

なお、テキストは以下の点で優れているため、効率的に学習するのであればおすすめします。

  • 過去の出題傾向を分析のうえ、出やすい問題がピックアップされている
  • カテゴリごと整理されているので、頭に入りやすい

私の失敗談なのですが、最初は右も左も分かりませんでした。

テキストが効率的に過去問をピックアップ・整理していることを把握していなかったのです。

このため、実際の過去問を数年分印刷して、切り貼りしてカテゴリごとに並び替えるというとんでもなく非効率的なことをしていました。

しばらくした後に、「あれ、これテキストのほうが全然効率的では?」と気づいた次第です…

後ほど説明しますが、テキストは暗記キーワードを拾いやすいメリットもあるので、「時間をお金で買う」発想からやはりテキストをおすすめします。

なお、午前1については会社内の仲間にテキストを譲ってもらえる可能性があります。

これは、午前1の以下のような特徴によります。

  • 午前1だけでも合格すると、むこう2年間は午前1が免除される
  • 応用情報技術者か他の高度資格を取得すると、むこう2年間は午前1が免除される
  • よって例えば、応用情報を取得後、2年後に高度資格を取得すると合計4年間午前1は免除される

暗記のコツ、シンプルにキーワードで覚える

学習する過去問がわかったところで、最初の1問目からどう暗記すればよいのか説明します。

ポイントは「AはBである」とシンプルにキーワードで覚えることです。

具体的に手順を説明します。

最初に問題を見ます。

【問題】ソフトウェアライフサイクルプロセスのシステム方式設計で行うものはどれか(出題:システムアーキテクト午前2・H27問1)

  • ア ソフトウェア構成品目の明確化
  • イ ソフトウェアコンポーネントの構成の明確化
  • ウ ソフトウェアのインターフェース仕様の決定
  • エ ソフトウェアのユニットごとのテスト要求事項の定義

次に、すぐに答えを見ます。答えはアのようです。

最後に、問題と答えのキーワードに下線を引いて、つなげて覚えます。

この問題の場合、『「システム方式設計で行うもの」は「構成品目の明確化」』です。

以上です。これだけの作業であれば1分かかりません。

なお、テキストの場合は解説が書いてあるので、特に答え部分のキーワード抜粋に効果的です。

このやり方のメリットをお伝えします。

  1. 時間効率が良い
  2. 出題者の真意をシンプルに理解できる

まず、「1.時間効率が良い」のは重要です。

とくに午前1は応用情報技術者の午前80問から抜粋される30問なので、学習範囲が極めて広いです。

1問1分くらいでサクサク進めないと、続きませんし挫折してしまいます。

なお、私の失敗談ですが、午前1の学習の一番最初に2進数やビットの計算が出てきます。

これをまじめに取り組んでしまい、相当疲弊しました。

まじめにやると分からないことだらけで、焦りや自己否定にもつながってしまいます。

最初から「1問1分でキーワードをつなげて覚える」と気楽に構える方が長続きしますし、効率的です。

次に、「2.出題者の真意をシンプルに理解できる」のも相当に重要です。

先ほど掲載した過去問題ですが、ぱっと見すごく難しそうに見えませんか?

出題者に「要は何が言いたいの?大事な伝えたいことがあるから問題にしているのでしょう?」と聞いてみたとしましょう。

返ってくる答えが先ほどの1文『「システム方式設計で行うもの」は「構成品目の明確化」』です。

確かに実務・知識の両面から、この考えはきわめて重要です。

システム方式設計はユーザーニーズの整理(要件定義)の後に行うものです。

具体的には、ユーザーニーズをどこまでシステムで実現して、どこまでは今までどおり(手動)とするのか。システムで実現する場合のハードウェア、ソフトウェアの構成はどうするのか。

まさに業務とシステムのグランドデザインを描く部分です。

もちろん、今の段階ではピンとこないかもしれません。

しかし、今後のキャリアのためにも、資格テクニック的にも「1文で覚える」のは有効です。

今はわからなくても、その1文は真髄であり、あとで発想の火種になります。

資格テクニック的にも、真髄が分かっていれば、すこし問題をひねられても対処できるのです。

なお、計算問題はもちろん例外で、これは問題と答えをセットで覚えるしかありません。

ただ、その際も覚える部分はピックアップすることをおすすめします。

計算問題の真髄は計算過程そのものであり、これの習得は一朝一夕ではいきません。

よって基本は暗記であり、少し踏み込んだとしても「はいはい、この問題の場合は、この数字を使ってこう導くのね。わかった」くらいで十分と思います。

せいぜいひねられても、数字の一部が変わるくらいだからです。

また、システムアーキテクトの場合は設計を指導する立場のため、業務フロー・データベース・ソフトウェア設計(オブジェクト指向)などに関する図を使用した問題も出てきます。

この場合も、部分的にピックアップして「この図のときはこう」くらいの対処となります。

時間を置いてラリーする

さて、必要な過去問を、上記の要領で1回暗記したとします。

この後は、時間を置いて2、3回目のラリーを行います。

ラリーのタイミングとやり方について説明します。

まずタイミングですが、基本的には試験本番まで均等になるよう配置します。

要は「試験本番で忘れないように、定期的に復習して記憶を定着させる」ためです。

一般的に記憶の定着は覚えた1日後、1週間後、1カ月後が有効とされます。

複数回使った知識は、脳が「これは必要そうだ」と判断するからです。

次にやり方ですが、ラリーの際は問題文と答えに下線が引いてあると思うので、それを用いて1文を見返すのみです。

1問30秒もかかりません。

また、テキストを使って学習した方の場合ですが、実際の過去問でのアウトプットをおすすめします。

これはアウトプットによる記憶の定着と、実際の試験に慣れる目的です。

本試験の注意点を抑えておく

最後に、本試験の注意点を抑えておきましょう。

定着した記憶をうまく引き出し、合格に届かせるためです。

さて、具体的な本試験の注意点は以下のとおりです。

  • 約5割の過去問の再掲は確実におさえること
  • しかし、再掲でも選択肢の順が入れ替わったり、内容が少し変わる場合がある
  • よって過去問の再掲こそ焦らず、じっくり暗記したキーワードに沿って回答
  • 残り5割の新規問題も、少し考えれば選択肢を絞れるのであきらめないこと

最後に、「新規問題も、少し考えれば選択肢を絞れる」について具体的に説明します。

【問題】システム化構想の段階で、ビジネスモデルを整理したり、分析したりするときに有効なフレームワークの一つであるビジネスモデルキャンバスの説明として、適切なものはどれか。(出題システムアーキテクト午前2・R03問13)

  • ア 企業がどのように、価値を創造し、顧客に届け、収益を生み出しているかを、(省略)九つのブロックを用いて図示し、分析する
  • イ 企業が付加価値を生み出すための業務の流れを、(省略)五つの主活動と、調達、技術開発など四つの支援活動に分類して分析する
  • ウ 企業の強み・弱み、外部環境の機会・脅威を分析し(省略)事業機会や事業課題を発見する
  • エ 企業目標の達成を目指し、財務、顧客、内部ビジネスプロセス、学習と成長の四つの視点から(省略)バランスのとれた事業計画を策定し進捗管理をしていく

解き方の一つは消去法です。

イがバリューチェーン分析、ウがSWOT分析、エがバランススコアカードだと分かっている場合、答えは消去法でアになります。

もう一つの解き方は問題文をよく読むことです。

問題文に「ビジネスモデルを整理したり、分析したりする」とあります。

これに最も近いのは解答アの「企業がどのように、価値を創造し、顧客に届け、収益を生み出しているか」だとアテをつけます。

また、問題文に「ビジネスモデルキャンバス」とあります。

「キャンバス」という言葉と、解答アの「ブロックを用いて図示し」という表現も近そうだ…とアテをつけ、答えをアだとします。

このように、全くわからなそうでもヒントはあるものです。

とくに会社で仕事をされている方は、ビジネスに関する知識が知らず身についているものです。

あきらめずに考えてみましょう。

とくに午前2は問題数が25問と少ないので、1問の差が合否をわけることがあるからです。

さて、次は午後1学習の具体的なやり方について説明します。

学習法(午後1)

はじめに、気楽に考える

午後1の学習をはじめるにあたり、まず問題を見てみましょう。

テキストをお持ちの方は午後1対策部分をご覧ください。

IPAのホームページには過去問が掲載されているので、こちらでも大丈夫です。

いかがでしょうか。

「文字が多い」

「何が書いてあるのかよくわからない」

「読む気がしない」

など感じたのではないでしょうか。

しかし、なにごとも「自分にもできそう」「簡単そう」から入るべきです。

仕事や家事育児で疲れているなら、なおさらです。

そこではじめに「気楽に考える」ことからおすすめします。

具体的には以下のとおりです。

  • 内容の全部を理解する必要は、全くない
  • ざっと見て、一部に下線引いて、設問を見て、答えを探す
  • それでパッと答えがすぐわかるのが普通
  • 6割で合格なので、確実に取れるところを取ればよい

気楽でよい理由は、短時間の答え探しだから

なぜこのように気楽に考えてよいのでしょうか。

それは、午後1が以下のような試験だからです。

  1. 基本は本文中の答え探し
  2. 業務のくわしい知識は不要
  3. 制限時間が短い

順に説明します。

まず「1.基本は本文中の答え探し」についてです。

採点者は大量に添削するので、反射的に〇×をつけなくてはいけません。

このため、「人によって答えが違う」問題は出せないのです。

そうなると、本文中に答えをそのまま載せるしかありません。

もちろん例外はあるものの、まれであり差もつきづらい部分です。

とにかく、簡単に取れるものをしっかり取ることが重要です。

次に「2.業務のくわしい知識は不要」についてです。

受験者は全員バックボーンが違います。

例えば、金融系の技術者なら銀行に関する問題が出たら有利です。

でも、そこで有利不利がつくのは不公平でしょう。

つまり業種の知識がそこまでなくても解けるようになってるのです。

次に「3.制限時間が短い」についてです。

午後1は全部で90分です。

まず全部で4問あるうち、解答する2問を選ぶことに5分かけるとします。

また、最後に見直しの時間を5分もうけるとします。

そうすると、2問を80分で解くので、1問あたり40分です。

答えは手書きするので15分ほどかかります。

そうなると、25分で「読んだうえで答えを考える」必要があります。

つまり、そもそも深読みしない前提の問題なのです。

午後1試験の目的を抑えておく

さて、実際に問題を解く前にもう一つ抑えておきたいことがあります。

それは、午後1試験の目的です。

言い換えると、午後1試験を通じて国家は何を見定めたいのかです。

私が考えるに「システムアーキテクトをケーススタディでイメージできるか」だと思います。

システムアーキテクトの役割は大まかに以下です。

  • ITストラテジストの提案を受けて
  • 必要となる要件を定義し
  • それを実現するためのアーキテクチャを設計し
  • 開発を主導する者

なお、「ITストラテジストの提案」とありますが、これは以下です

  • 企業の戦略目標達成のため
  • 現状を分析し、問題・課題を把握して
  • 収集した情報と、IT知識もふまえ
  • 打ち手を考える

つなげたうえで要点を整理すると以下となります。

  • 企業の戦略目標達成のため
  • 現状を分析し、問題・課題を把握して
  • 考えられた打ち手について
  • 必要となる要件を定義し
  • それを実現するためのアーキテクチャを設計

言い換えると、「大まかな方針(目的・制約・方法)の中で、ユーザーニーズを整理し、解決のための事務・システムデザインをすること」です。

このため、実際の問題構成も大まかには

  • どのような企業か
  • どのような現状で、課題や問題があるか
  • どのようなユーザーニーズがあるか
  • どのような打ち手が考えられたか
  • それらをふまえ、どのような事務システムデザインをしたか

となるのです。

このことをイメージだけでもしておくと、本文中の「答え探し」が更にやりやすくなります。

解き方のイメージ(午後1)

解き方のイメージをつかむ。とくに設問は大事

解き方のイメージについてご説明します。

まず1分ほどで、タイトルだけ見て構成を把握します。

以下は簡単な例文です。

太字だけ読んでみましょう。

  • 研究所の業務改善について
  • 【どんな企業か】研究所。依頼を受けて調査・研究する
  • 【今の業務内容、困ってること、やりたいこと】
  • 誰が利用したかわかるよう、利用者ごとカードを発行
  • 調査依頼を受ける際は、利用者カードの提示が必要
  • 利用者カードを忘れた場合は再発行。古いカードは使えないようにする
  • ※表1※利用者カードマスタ:利用者カード番号、利用者コード、状態区分
  • 【ユーザーニーズ】利用者カードを忘れたときの、つど再発行が手間である
  • 【考えられた打ち手】プラスチックカードを廃止しスマホで表示可能にする
  • 【事務システムデザイン】
  • オンラインで仮登録後、本登録の状態にする
  • メアドに送付されたURLを押すと、利用者情報が掲載されたQRコードを表示
  • ※表2※利用者マスタ:利用者コード、氏名、電話番号、メールアドレス

次にもう一度本文を見て、5~10分ほどで「悪いこと」「目立つこと」に下線を引きます。

この例文ですと、「古いカードは使えないようにする」「つど再発行が手間である」などの部分ですね。

最後に設問を見て、答えのアテをつけます。これは10分が目安です。

設問は大別して「現在の業務」を理解できているかと、「新しい業務」を理解できているかの2つがあります。それぞれ説明します。

事例1、現在の業務について

(設問の例)今の業務内容について、利用者カードに必ず含まれるべき情報を表1から答えよ。また、カードの業務管理上の理由を答えよ

答えのアテのつけ方を説明します。

まず最初に「今の業務内容について」とあるので、そのブロックを見ればよいですね。

次に、「利用者カードに必ず含まれるべき情報を表1から」とあります。

システムアーキテクト試験はこのように、業務フローやファイルレイアウトが図や表で示されることが多くあります。

この図や表自体が、現在または変更後のデザインを表していることもあるので、ぱっと見何が書いてあるか読めるようにはしておく必要があります。

※かつてはDFD、ER図、シーケンス図を直接補記するような問題もありましたが現在はあまり出されない印象です。推測ですが、ユーザーニーズの正しい把握により重点が置かれているためと思われます。

※どのようなデザインなのか読めるだけでよく、深堀は不要です。イチから自分で書ける必要はありません。

※この表から答えを選ぶこともあるので十分注意ください

いくつか答えが思いつきます。

  • 利用者カード番号
  • 利用者コード
  • 状態区分

最後に「カードの業務管理上の理由」とあります。

ここで、下線を引いた「古いカードは使えないようにする」に注目します。

それを見分けるには、少なくとも「利用者カード番号」はカードに必要ですね。

ということで答えは「利用者カード番号」「古いカードは使えないようにする」となります。

事例2,新しい業務について

(設問の例)事務システムデザインについて、表2の利用者マスタに追加で管理が必要な項目を答えよ

まず最初に「事務システムデザインについて」とあるので、そのブロックを見ればよいですね。

次に、「表2の利用者マスタに追加で管理が必要」とあります。

いくつか答えが思いつきます。「仮登録か、本登録かの状態」「URLを送付するためのメールアドレス」などです。

ただ、表2を見る限りメールアドレスは既にあるようですね。

よって答えは「仮登録か、本登録かの状態」となります。

これら例文・設問はあえて簡単に書きましたが、本試験も基本はこのような構成です。

なお、答えを書くときの注意点があります。

  • 「古いカードは使えないようにする」からと、本文の表現を極力使う
  • 設問で聞かれたことについて答える
  • 例えば「理由」を聞かれたら、「~だから」「~のため」と答える
  • 以上が解き方のイメージです。

ここからわかることは

  • 答え探し自体は、ほぼ一意にぱっとわかること
  • ただし、設問もしっかり確認すること
  • これは、答えを絞り込むため設問で条件をつけているから

実際に解いてみる。時間を図って、振り返る

それではイメージがわいたところで、実際に問題を解いてみましょう。

テキストをお持ちの方は午後1対策部分をご覧ください。

IPAのホームページには過去問が掲載されているので、こちらでも大丈夫です。

先ほどの「解き方のイメージ」を参考にやってみましょう。

  • まず1分ほどで、タイトルだけ見て構成を把握
  • 次にもう一度本文を見て、5~10分ほどで「悪いこと」「目立つこと」に下線を引く
  • 最後に設問を見て、答えのアテをつける。これは10分が目安

ここまで完了したら、早速答えを確認します。

外れていた部分は、解説などを参考にしながら理由を考えます。

これを最初の1~2問でおこない、傾向をつかみます。

以降は、実際に時間を図って取り組みましょう。

なお、私の失敗談なのですが、午後1が59点で不合格となりました。

その際は率直に言って練習不足でした。

インプット情報として理論・理屈は把握していたものの、過去問もアテをつける作業を15分くらいで行い、振り返りもざっとしかしていませんでした。

このため本試験で以下のように困りました。

  • 時間配分ミス。問1の読み込みに時間を要しすぎ、解答を書くあたりで時間半分を経過
  • 設問読み込み漏れ。思い込みで答えのアテをつけてしまい、設問内の絞り込み条件見逃し
  • 答えのアテ付けミス。下線を引きすぎて回収すべき伏線を見逃し
  • 答えの選択ミス。パッと思った答えがあったのに、考えすぎてしまい誤った答えに

つまり、本文を読んで、答えのアテをパッとつけるところは結構すぐできるんですね。

しかし、大事なのはそこからなのです。

設問を読んで条件を絞り込み、回収すべき伏線も拾って、全体を網羅して正しいと思われる一つの答えに確信を持ち、文章中の表現を使って答える。

これを時間内に終わらせるには「練習による慣れ」と「その過程もきちんと振り返り、改善する」ことが必要なのです。

本試験での注意事項

最後に本試験での注意事項をお伝えします。

  • 4問の中から2問選ぶときは、できるだけ得意分野で
  • 例えば、ユーザーニーズ寄りの方がシステムデザインより得意など
  • 時間配分に注意。前述のとおり時間はシビア
  • ぱっとわからないものは深追いしない。全体で6割取れればよい
  • ただし何らか答えは書く。部分点がもらえるかもしれないため
  • 繰り返しだが設問に注意。絞り込みのヒントであり、聞かれたことに答えるため

学習法(午後2)

はじめに、気楽に考える

午後2の学習をはじめるにあたり、まず問題を見てみましょう。

テキストをお持ちの方は午後2対策部分をご覧ください。

IPAのホームページには過去問が掲載されているので、こちらでも大丈夫です。

いかがでしょうか。

「何をどう書いたらいいかさっぱりわからない」

「そもそも自分は問題に書かれているような経験がない」

など感じたのではないでしょうか。

しかし、なにごとも「自分にもできそう」「簡単そう」から入るべきです。

仕事や家事育児で疲れているなら、なおさらです。

そこではじめに「気楽に考える」ことからおすすめします。

具体的には以下のとおりです。

  • 本文のガイドに沿って、少しづつ肉付けすればよい
  • 深い業務知識は問われない
  • シンプルな内容で良い

気楽でよい理由は、本文のガイドに沿ってシンプルに書けばよいから

なぜこのように気楽に考えてよいのでしょうか。

それは、午後2が以下のような試験だからです。

  1. 本文のガイドに沿った記載が必要
  2. 業務のくわしい知識は不要
  3. 制限時間が短い

順に説明します。

まず「1.本文のガイドに沿った記載が必要」についてです。

採点者は大量に添削するので、なるべく早く判定をしなくてはいけません。

このため、「まったくオリジナルの構成論文」はいかに内容が良くても評価できないのです。

そうなると、本文のガイドに沿った記載をしてもらうしかありません。

次に「2.業務のくわしい知識は不要」についてです。

受験者は全員バックボーンが違います。

例えば、金融系の技術者なら銀行に関する問題が出たら有利です。

でも、そこで有利不利がつくのは不公平でしょう。

つまり業種の知識がそこまでなくても答えられるようになってるのです。

次に「3.制限時間が短い」についてです。

午後2は全部で120分です。

まず解答する問題の選択と、ヒアリングシートの記載に10分かけるとします。

実際に書ききるのに85~90分かけるとします。

そうなると、書く構成を決めるのは20~25分しか残らないのです。

つまり、シンプルな内容で良いのです。

午後2試験の目的を抑えておく

さて、実際に問題を解く前にもう一つ抑えておきたいことがあります。

それは、午後2試験の目的です。

言い換えると、午後2試験を通じて国家は何を見定めたいのかです。

私が考えるに「システムアーキテクトとして実際の成功体験を積んでいるか」だと思います。

システムアーキテクトの役割は大まかに以下です。

  • 企業の戦略目標達成のため
  • 現状を分析し、問題・課題を把握して
  • 考えられた打ち手について
  • 必要となる要件を定義し
  • それを実現するためのアーキテクチャを設計

このため、実際の論文構成も大まかには

  • どのような企業か
  • どのような現状で、課題や問題があるか
  • 解決のためどのような情報を収集したか
  • それらをふまえ、どのような打ち手を考えたか

となるのです。

このことをイメージだけでもしておくと、論文の記載が更にやりやすくなります。

解き方のイメージ(午後2)

書き方のイメージをつかむ。イメージは面接

書き方のイメージについてご説明します。

午後2試験は「システムアーキテクトとして実際の成功体験を積んでいるか」を論文を通じて語ります。

あたかも面接のように受け答えするものです。

そこでイメージしやすいよう、仮に面接だったとした場合の流れを説明します。

<面接開始>

(面接官)こんにちは。

(あなた)こんにちは。

(面接官)システムアーキテクトになりたいということでよろしいですか。

(あなた)はい。

(面接官)わかりました。それではまず、システムアーキテクトとしてのあるべき動きを具体例で説明します。

※ここで説明する内容が、問題文に該当

(面接官)以上です。あなたも同じような経験がありますよね?それを教えてください。

(面接官)まずは、あなたがどのような方か、どんな背景(企業・戦略・現状・課題)をお持ちなのか教えてください

(あなた)はい。私は金融系大手A社のシステムアーキテクトです。A社の背景は…

※ここで説明する内容が、ヒアリングシート(別紙)と設問ア

(面接官)ありがとうございます。それでは早速、ご経験を語ってください。

(あなた)はい。まさに先ほどご説明いただいた「あるべき動き」を経験し、成功しています。

(あなた)例えば最初の「業務の本番日からシステムが使えるような工夫…」についてですが

(あなた)私は具体的にxx.xxの本番日にむけて、あらかじめ新旧フラグを用意しておき…

(あなた)次に…(省略するが、事例の一つ一つについて具体的に説明していく)

※ここで説明する内容が設問イ

(面接官)ありがとうございます。最終的にどうなりましたか?そのことをどう思いますか?

(あなた)はい。最終的に成功しました。経営戦略で定められたKPI(目標値)を達成しました。

(あなた)これは〇〇の点で気を付けたからです。

(あなた)なお、あえて言えば(他者から見ればささいな点だが、自分はもっと高みを目指すアピールで)この点を次は改善したいです。

※ここで説明する内容が設問ウ

(面接官)大変よくわかりました。結論として合格です。

(面接官)その理由ですが、まず以下の必須ポイントをおさえていただいたことです。

  • システムアーキテクトとしての役割をふまえ(妥当性)
  • 私の投げかけた話に沿って漏れなく(充足性)
  • 具体的に語ってくれた(具体性)

(面接官)さらに、以下のポイントもおさえていただいたのは嬉しかったです。

  • 話の流れがシンプルでわかりやすく(論理性)
  • あなたのお考えもふんだんに盛り込んでいただいた(独自の見解)

(面接官)これからシステムアーキテクトの役割はますます重要になります。よろしくお願いします。

(あなた)承知しました。本日はお忙しい中時間を割いていただき、ありがとうございました。

<面接終了>

実際に書いてみる。時間を図って、目安を知る

それではイメージがわいたところで、まずは1回、実際に論文を書いてみましょう。

テキストをお持ちの方は午後2対策部分をご覧ください。

IPAのホームページには過去問が掲載されているので、こちらでも大丈夫です。

先ほどの「書き方のイメージ」を参考にやってみましょう。

  • まず10分ほどで、問題を選びヒアリングシートを記入
  • 25分ほどで問題を見て、構成を検討
  • 後はひたすら書く。ここでかかる時間を1回は測る

はじめて受験の方は、この「実際に書いてみる」を1度はおこなうことをおすすめします。

思った以上に時間がかかったり、うまく書けない部分が明らかになるからです。

本試験での注意事項

最後に本試験での注意事項をお伝えします。

  • 2問の中から1問選ぶときは、できるだけ得意分野で
  • 例えば、ユーザーニーズ整理寄りの方がシステムデザインより得意など
  • 時間配分に注意。前述のとおり時間はシビア
  • 最低文字数ラインはかならず超える
  • 知らない人に説明することをふまえ、シンプルでわかりやすい構成にする

おわりに

いかがでしたでしょうか。

なお、これらのやり方は私の経験と失敗をふまえた、限られた時間で効果を上げるための「私なりのおすすめのやり方」です。

よって、「時間をもう少し確保できる」「もう少し本質的に理解したい」など皆様方のお考えもふまえ、柔軟にアレンジいただければと思います。

皆様からフィードバックをいただき、日々少しづつでも前に進めれば幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします。

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