大変なことほど長続きしないのは自然なこと
あなたは、「何をやっても長続きしない」「目標を立ててもすぐに飽きてしまう」と悩むことはないだろうか。
例えば体を鍛えたいと思い、筋トレを始めたものの、2~3週間でやめてしまうなどだ。
実はそれはきわめて自然なことだ。
人間はできるだけ楽で、今と変わらず、メリットがすぐ得られる行動を選ぶ
例えばあなたの目の前にバナナがあるとしよう。
その少し先にはもっと美味しい果物(あなたが最も好きな果物を想像しよう)があるが、そこに行きつくには時間がかかりそうだ。
このとき、あなたは楽に手に入るバナナか、苦労を伴う果物のどちらを選ぶだろうか?
おそらくバナナではないだろうか。
これは少し考えれば自然なことで、我々の祖先から受け継いだ本能であるように思う。
生き抜いていくためには、確実に得られる食料を得て満足し、ヘタに動かず休息したほうが良いからだ。
似たような話に行動経済学のプロスペクト理論がある。
人間は目の前に利益があると、利益が手に入らないというリスク回避を優先する。
例えばバナナの例なら、確率上の期待値は同じでも、以下Aを選ぶ人が多くなる。
- A:100%の確率で180円のバナナ
- B:90%の確率で200円の果物。ただし10%の確率で何も得られない(0円)
また、損失を目の前にすると、損失を回避しようとする。
例えば以下の例なら、 確率上の期待値は同じでも、Aを選ぶ人が多くなる。
- A:90%の確率で200円失う。ただし10%の確率で何も失わない(0円)
- B:100%の確率で180円失う
いずれにせよ、「人間は楽をしたがり、損を恐れるものだ」とまずは把握しておこう。
なぜブラウザゲームで課金をしてしまうのか
少し脱線するかもしれないが、人間の本能について補足してみる。
あなたはブラウザゲームで遊んだことはあるだろうか。
ゲームの種類は数多くあるし、シンプルで奥深い操作性や魅力的なキャラクターなどに惹かれ、おそらく何らかプレイしたことはあるのではないだろうか。
それでは、いわゆる「ガチャ」で課金しすぎて後悔したことはないだろうか。
もしある場合、ある程度は原因を人間の本能から説明できる。
まず入口はシンプルで、「最初の数回は無料だから、報酬が得られるかもしれない」から入る。(大抵のガチャはログインボーナスなどで、最初は無料であることが多い)
ここであなたは「数回引いたし、もう少し引けば目当てのキャラが得られるかもしれない」と期待を持ち始める。
これは「報酬の感覚」と言われるもので、あなたの目の前に「確実に手に入りそうな予感がするバナナ」が浮かびあがるのだ。
そして「では試しに1万円…」と課金すればするほど、「もう少しで引けるはず」と期待が高まり、撤退が難しくなる。
さらに、投資額が多くなってくると、プロスペクト理論にあった「損失を目の前にすると、損失を回避しようとする」本能が強まってくる。
すなわち、「これだけ投資したのにここで撤退したら完全な損失だ。だけどもう少し投資すれば目当てのキャラが出て勝てる(損失を回避できる)かもしれないんだ」と、いわゆる損切りができなくなる。
こうして振り返ってみると、いつのまにか驚くほどの課金をしていた、ということになってしまうのだ。
ここで覚えておきたいのは、バナナ(本能)をうまく使われると、人は簡単に誘導されてしまうということだ。
目標達成に向けて、本能をうまく使う
それでは私たちは、毎日楽に生きているつもりで、いつのまにか資本主義社会に搾取され後悔するしかないのだろうか?
答えはノーだ。
なぜなら、あなたがこの記事を読んでいる時点で、あなたは少なくとも「多少困難だが達成したい目標を定めて」いるからだ。
あとは、その目標を達成するためのコツを把握して実践すれば良い。
始める理由を書いておく
まず、あなたが目標を定めた際に、「何が嬉しいのか」を書いておこう。
おぼろげでもよいのでバナナのイメージを用意しておくのだ。
こうすることで、大変なとき、挫折しそうな時に「何が嬉しいのか」を振り返ることができる。
例えば筋トレであれば「体が引き締まって自分に自信が持てる。頭も冴えて効率が良くなるらしい。健康寿命が伸びて自分らしく生きられる…」などだ。
簡単すぎることから始めて、習慣にする
次に、目標達成に向けた最初の一歩はきわめて簡単にする。
例えば筋トレなら、1日1回だけ腹筋するなどだ。
人間は極めて簡単なことなら、努力せず行うことができる。
そしてこれを少なくとも2週間~1カ月続ける。
そうなると行動が「習慣化」され、だんだんやらないと気持ち悪くなってくる。
最初に設定した「何が嬉しいのか」に徐々に近づき、本能がやる気をもたらすのだ。
段階的なゴールを用意する
最後に、行動が習慣化してきたら、最終目標から逆算した段階的なゴールを設定しておく。
そしてその小ゴールごとに「嬉しいこと」や「プチ報酬」を用意するのだ。
可能であれば小ゴールの達成状況と、次に生かす点を考えられるとなおよい。
これはいわゆるPDCAサイクルの考え方であり、最終目標達成にむけた大きなサイクルだけでなく、そこにむけた小さなサイクルも回していくということだ。
バナナとガチャの例え、ふたたび
ここまでの説明を簡単に振り返ってみる
- 筋トレなど「大変な目標」が長続きしないのは自然なこと
- 人間は目の前のバナナを優先するし、簡単に誘導されてしまう
- 本能をうまく利用し大変な目標」に向けて自分を誘導してみる
ここから、分かりやすさのため表現を露骨にすることをご容赦願いたい。
最も伝えたいのは3点目のポイントで、バナナ・ガチャの例えと比較してみよう。
- (ガチャの例⇒目標達成に置き換えると)
- 魅力的なキャラクターを見せる。(バナナをぶら下げる)⇒「嬉しいこと」を書いておく
- まずは無料でガチャを引かせる。(すぐ取れそうなところにバナナを置く)⇒「簡単すぎること」から始めて習慣化する
- 後は適度にスピード感・ニアミスを演出(あたかも取れそうにバナナを見せる)⇒「小さなゴール」を設定し、それにむけて自分を誘導する
- 気づけば大量の課金をしてしまっている(気づけばバナナを追いかけている)⇒いつのまにか目標に大きく近づいている
具体的なサンプル
最後に、私自身が記事に書いてあることを実際に試してみた結果を書いておく。
私は目標を大きく「健康」「家族」「社会」にカテゴリ分けしている。
そして「健康」であれば筋トレ、「家族」であれば定時帰り、「社会」であれば資格勉強などタスクを定めており、今のところ全て続いている。
あらためて「継続は力なり」と感じる次第だ。
今後も続けていくつもりではあるが、1点注意点として「頑張りすぎると疲れてしまう」ことがある。
今まで書いたとおり「実際は大変なことを、バナナをぶら下げて誘導している」ので、本能が求める「本当に楽しいと思える楽なこと」を与えるのも重要だと感じた。
例えば資格勉強であれば平日15分、休日は1時間程度と時間を定めそれ以上は行わない。
最初に目標設定する時点で、そのくらいの時間で完了するよう考えておく。
そのうえで余った時間は、趣味のゲームや家族との他愛ない会話、瞑想や散歩など「余白時間」として楽しむようにしている。
この記事があなたの目標達成において、何らか参考になれば幸いである。
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