この記事は現代のデジタル化とAI活用について整理し、個人としてどのようなスキルが求められるかを考察したものです。
デジタル化とは何か
現代において、デジタル化が世界・国家・企業にとって急務となっています。
デジタル化とは、「ビジネスをデジタルデータに基づいて変革し、新しい価値を生み出すこと」です。
背景には、データ保管コストの低減・通信速度の高速化・それらを処理するAI技術の急速な進歩があります。
これらにより、紀元前の「農耕革命」や18世紀の「産業革命」に匹敵するような人類の歴史的転換がAIによってもたらされつつあるのです。
これは、従来の機械化経済の成長上ネックであった「機械は無限に増やせるが、労働人口には限りがある」点が解消されるためです。
いち早くこの革命に対応した国家は爆発的な経済成長を享受し、乗り遅れた国家との間で「大分岐」が生じるといわれています。
日本は世界に遅れを取っていることを認識しつつ、安全保障上の観点からもデジタル化を推進しています。
具体的には、科学技術イノベーションを経済再生の原動力と位置づけ、2019年に内閣府から「統合イノベーション戦略2019」が発表されました。
このなかでAIについては「教育改革、研究開発、実世界の重点領域でのAI社会実装等を通じ、産業、地域、政府の全てにAIを普及させる。AI戦略に即した推進体制の下での、AI関連中核センター群の強化・抜本的改革を進める。」としています。
例えば教育の観点では、小中学校・高校・大学・社会人の各領域で年間約100万人のAI人材育成が計画されています。
具体的には2020年から小学校でプログラミング教育が必修となったり、社会人はスクールや職業訓練の強化等がされるなどです。
以上をふまえれば、デジタル化が世界・国家・企業において急務であり、個人としても可能な限り関連スキルを身に着けたほうがよいと言えるでしょう。
AIとは何か
それではデジタル化において欠かせないAIとは何でしょうか。
AIとは「artificial intelligence」の略であり、和訳すると「人工知能」です。
しかし、コンピュータは計算機であり、計算しかできません。
人の知的活動は数式化できない(リアルに測定する方法がない)ので、「人間の知能を模したもの」ではないのです。
よって現代ではAIとは「機械学習を用いたシステム」を指すのが一般的です。
機械学習の手法と活用シーン
機械学習とは サンプルデータを元に与えられた問題の答えを予測する、統計的な方法論のことです。
扱うインプットデータは大きく画像、音声、文字、数値となります。
これらのデータを処理する方式は、数学のうち確率と統計です。
詳しく言うと回帰、分類、クラスタリングの3手法です。
なお、従来の機械学習分野では論理的な手法も検討されていました。
「AはBである、BはCである。よってAはCである」という具合ですね。
しかし、例えばいくら辞書的にイチゴを教えても、実際のイチゴの判別は不可能です。
一方、現代では大量のデータが安価に取得できるようになったので、統計的手法が結構当たるようになり、主流になっています。
なお、機械学習が適用される業界は以下のようなものです。
- 金融…ロボアドバイザ
- 教育…学習管理ロボ、パーソナライズ教材
- 不動産…価格予測、物件マッチング
- 医療、健康…パーソナルトレーニング、ロボット診断
AIの実例 画像解析
それではAIについて理解を深めるため、もう少し具体的に見てみましょう。
まずは「画像解析」です。
ジャンルは文字解析、画像分類、物体検知に分類されます。
実際の活用シーンは不良品検知、放射線画像診断、不審者検知などです。
画像解析AIはイチから構築する必要はなく、すでにサービスが提供されています。
例えば「NANONETS」は画像ファイルに「犬か猫か」をタグ付けして複数枚保存すれば、「犬猫判定AI」が作成できます。
なお、画像解析につきもののディープラーニングについても少し言及します。
画像解析の構造は、大量のデータを集め、「形」や「色」の二次関数で散布図を取ることです。
そして新しい画像について「分類」の手法で判別しています。
ただし、この手法は「形」「色」などの特徴を全て教える必要があります。
ディープラーニングは自動で「丸い」「放射状」「赤い」など抽象概念を表し、その特徴量を組み合わせています。
欠点は何段階で判定するかは人が設定することと、結果の説明が極めて困難なことです。
AIの実例 音声認識・言語解析・音声合成
次に音声認識・言語解析・音声合成です。
ジャンルは形態素解析(品詞に分解)、構文解析(主語述語や代名詞を把握)、意図解析に分類されます。
実際の活用シーンは自動書き起こし、翻訳、AIアシスタントなどです。
音声認識、言語解析、音声合成AIもすでにサービスが提供されています。
例えば「WATSON」はかなり精度が高いので、基本はこれを呼び出して使います。
例えば文字を音声として流暢に読み上げたり、AIチャットボットを作成したりできるのです。
なお、音声認識は技術的には「分類」になります。似た音のパターン特徴と最も近いものを選ぶのです。
ただし、同音異義の判別が難しいところです。
また、音声合成はシンプルに音をつながるだけだが、そうすると棒読み機械音になってしまいます。
これらの課題解決のため、ディープマインド社は確率過程の手法で音楽や画像合成のほか、音声合成も実現しています。
やり方は「次」に何が来るかは完全なランダムではなく、なんらかの確率分布に従うという理論の元、大量のパターンを集めて予測するものです。
これにより同音意義の解釈や、音声合成で単語のつながりや発音、抑揚などを自然に再現できるようになってきました。
例えばgoogle翻訳で「かき」とだけ発音すると「oyster(牡蠣)」と訳されますが、「フルーツのかき」と発音すると「fruit persimmon(果物の柿)」と訳されます。
AIの実例 数値
ジャンルは回帰、分類、クラスタリングに分類されます。
実際の活用シーンは需要予測在庫管理、ワントゥワンマーケティング、レコメンド・マッチングなどです。
こちらも数値解析AIが複数用意されており、例えば「SKYFOX」では以下が行えます。
- 分類:成約見込み分類(過去成約データを100件以上を投入し、見込み客のうちどの客が成約しそうか確率予測)
- 回帰:土地価格予測(立地、広さ、その他環境要因と価格の関係を回帰分析し、他の事例の価格を予測)
- クラスタリング:マッチングアプリ開発(過去のマッチング事例を使って、世の中に存在するカップルのタイプをパターン化)
AIの可能性と弱点
これまで説明のとおり、AI技術の発展は凄まじく、スマートシティや自動運転など現実社会分野に大きく波及し、かつその精度は高まり続けています。
今まで不可能だった多くの課題も、テクノロジーの進歩により解決できるようになってきているのです。
しかし、課題がいきなり解決するわけではありません。
現代のAIはあくまでコンピュータであるため、使いこなすには正確な指示が必要です。
また、統計的な手法であるため論理・意味は理解はしていません。
人間が当たり前に使う大量の常識も教えこむ必要があります。
「AIは囲碁のチャンピオンには勝てるが、近所のおつかいにはいけない」と言われるゆえんです。
これから個人に求められる能力とスキル
最も必要なのは「自ら課題を見つけ解決する能力」です。
AIの力を借りることで、より多くの課題が解決し得る時代になったからです。
能力を伸ばすには実践が一番で、壁に当たって調べたり、他の手法を参考にして修正するなかで実際に使える力が身につきます。
また、以下のような能力も必要でしょう。
- 読解力:文意を正しく理解し応用できる能力。AIは文字通り読むことしかできない。つまり経営戦略の把握や業務の意味・課題の分析等は人手が必要
- 調整力:誠実さや礼儀正しさを含む。人と人の間に立ってすりあわせをし、全体をまとめる能力。AIは立場を忖度などしないし、大量のデータから結論を出すため工程の説明が困難
- 表現力:文章構成力も含む。AIは意味を理解していないので一見正しく見えても文章として成立させるのは難しい
なお、経験やスキルを深堀するなら上流(企画・ニーズ整理)がおすすめと言えます。
プログラミング言語でイチからAIを作らずとも、誰でもAIを簡単に使えるツールが増えてきているためです。
つまり、AIの活用アイデアを考えるAIデザイナーや、アイデアをシステムに実装するAIエンジニアとしてのスキルです。
また、「新しいテクノロジーを常に学ぶ」必要もあります。
課題解決の手法は日々アップデートされるためです。
さらに、「英語を扱えるようにする」必要もあります。
AI・ITに関する知の先端は英語に集まるためです。
前述のとおり機械翻訳は意味を理解しておらず、翻訳機を使うと生のコミュニケーションができなくなります。
生活には困らないかもしれませんが、グローバルに課題解決していくには足りないのです。
国家レベルでも、社会人向けのリカレント(再教育)、経産省による「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」のeラーニング拡大、AIによる問題解決人材育成制度の検討など実施されています。
これらの制度をうまく活用しながら、個人としての能力・スキルを高めていきたいですね。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
皆様からフィードバックをいただき、日々少しづつでも前に進めれば幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。
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